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大気圧で撥水化・接着強化 新大気圧プラズマプロセス技術「SAIMOS」を開発 専用装置との組合せで実用化へ

News Release                                                                                

2024年9月4日

株式会社 魁半導体

 

大気圧で撥水化・接着強化

新大気圧プラズマプロセス技術「SAIMOS」を開発

専用装置との組合せで実用化へ

 

 

プラズマ装置を開発販売する株式会社 魁半導体(京都市下京区、代表取締役 田口貢士)は、  大気圧(常圧)で撥水化、親水化など任意の表面改質を可能にする新しいプラズマプロセス技術「SAIMOS」(※1)開発しました。これまで大気圧プラズマ処理では撥水化は難しいとされていましたが、当社独自の新プロセスと装置構造を開発、実用化しました。本技術は受託加工での提供を開始し、現在開発中の新プラズマ装置と加工技術の組み合わせた提供も予定しています。

 

■大気圧プラズマと気化原料の応用技術

従来の大気圧プラズマ処理は、周囲の空気、特に酸素の影響を受けやすいという性質から、主な用途は材料の親水化や表面の酸化に限られていました。このため、撥水化や特殊な表面改質が必要な場面では、処理環境を制御できる真空プラズマが主に使用されてきました。しかし、真空プラズマは高価で設備も複雑なため、コスト面や作業効率の点で制約がありました。

一方で、近年の生産現場では、特に半導体や自動車産業を中心に、効率的で経済的なプラズマ処理技術が求められています。その中でも、開放空間で処理できる大気圧プラズマの需要が増加しています。これは、大気圧プラズマが真空設備を必要としないため、設備コストの削減や処理速度の向上といった利点があるためです。しかし、大気圧プラズマの撥水化技術が限られていたことから、特定の用途、例えば食品や薬品容器のコーティングにおいては、依然として溶媒を使用した従来の方法が採用されていました。これにより、作業者の健康への配慮や環境への負荷が問題視され、持続可能な代替技術が求められるようになってきました。

このような背景から、当社では大気圧プラズマによる撥水化処理技術の開発に取り組み、今回新たに「SAIMOS」と名付けた独自のプロセス技術を確立しました。「SAIMOS」では、大気圧プラズマによる処理を活用し、従来は真空プラズマでしか実現できなかった撥水化処理を、より経済的かつ効率的に行えるようにしたのです。

具体的には、「SAIMOS」技術は、プラズマ生成部から供給されるプラズマガスと、気化させた試薬原料を混合部で反応させた後、その生成物を大気圧下で対象物に照射し、表面処理を行うプロセスです。この技術により、様々な試薬原料に対応でき、撥水化や親水化といった多様な表面処理が可能となります。さらに、「SAIMOS」による処理では、シリカ系の超親水性超薄膜を形成することや、接着剤やコーティング層との接着強化も可能になり、より高度な表面機能を付与できるのです。

                               

この技術は、撥水性コーティングを必要とする食品・薬品容器だけでなく、他の様々な産業分野にも応用可能であり、作業者の負担軽減や環境負荷の低減、そして品質向上というメリットをもたらすことが期待されています。

 

※1:(Self-Assembling IntegratedMolecular Structures ; 自己組織化する集積分子構造体)

 

 

 

■受託加工と新装置を開発

新プロセス技術「SAIMOS」は今月から受託加工による提供を開始します。「SAIMOS」技術専用の新しい大気圧プラズマ装置を開発しており、装置とプロセス技術の組合せた提供も行います。

プラズマ生成部と気化した試薬の混合部は、処理対象物の形状や生産ラインの設置条件に合わせて自由度の高い設計が可能な組込型装置として提供予定です。(本技術は特許出願中)

 

 

■大気圧プラズマ処理の用途拡大

 自動車産業やエレクトロニクス産業では、構造用接着剤の用途拡大や電子部品の樹脂モールドによる耐久性向上が進んでおり、これらの分野では接着性や密着性が重要な課題となっています。プラズマによる表面改質は、これらの接着性や密着性の向上において極めて重要な役割を担っています。また、食品や化粧品、薬品などの容器の内部に撥水加工を施す際にも、プラズマ技術が必要とされるようになってきました。特に、環境配慮や作業効率の観点から、より高度で柔軟な表面改質技術の導入が求められています。

従来の大気圧プラズマ処理では、酸素などの影響により表面改質の範囲が限られており、特定の用途には対応しきれないことが課題でした。しかし、当社が開発した「SAIMOS」技術は、この制約を克服し、大気圧下でも撥水性から親水性まで幅広い表面改質を柔軟に制御できるようになりました。この技術により、自動車やエレクトロニクス産業における接着性や密着性の強化はもちろん、食品や化粧品、薬品容器の内部撥水加工など、多様な産業分野での利用が可能になります。

今後、当社はこの「SAIMOS」技術を活用し、これまで大気圧プラズマでは対応できなかった新しい用途の開拓を目指し、幅広い産業分野での展開を進めていく考えです。これにより、効率的かつ持続可能な生産プロセスを提供し、多くの業界においてさらなる価値を創造していきたいと考えています。

 

■当社実験

 ガラス表面を従来の大気圧プラズマ処理とSAIMOS処理とで比較しました。従来の大気圧プラズマは親水化しますが、「SAIMOS」では撥水化しています。(この撥水性は試薬由来のアルキル鎖が表面に修飾された結果であり、特定の樹脂や接着剤と特異な親和性を示します。)

 

 

 

 

 

【お問合せ先】 株式会社 魁半導体 https://sakigakes.co.jp/

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